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自分はメッシではない
サッカーを観ていると、ときどき「この人は別の競技をしているのではないか」と思う選手に出会います。
メッシがボールを持つと、スタジアムの空気が変わります。守備の人数が足りていても、コースが消されていても、気づいたらゴールが決まっている。バッジョもそうでした。誰も想像していなかった場所に、ボールと一緒に現れる。
何もないところから決定機を生み出す、0→1の天才です。
そして、はっきり言えることがあります。私はメッシではありません。
0から1を生み出す発想力も、一瞬で状況をひっくり返す突破力も、自分にはない。20年以上働いてきて、それはよく分かっています。
天才だけでは、試合に勝ち続けられない
一方で、仕事を続けるなかで強く感じてきたこともあります。
0→1の天才だけでは、組織は成果を上げられない。
メッシが輝いた時代のバルセロナには、シャビやイニエスタがいました。ボールを運び、テンポをつくり、メッシが最も力を発揮できる場所にボールを届ける選手たちです。メッシの0→1は、彼らの1→10があったからこそ、何度も繰り返されるゴールになりました。
組織でも同じです。
新しいアイデアや事業を思いつく人は、たしかに必要です。でも、そのアイデアを形にし、関係者を巻き込み、仕組みとして回し続ける人がいなければ、アイデアは会議室で終わります。いい企画が、誰にも引き継がれないまま静かに消えていく。そんな場面を、多くの人が見てきたのではないでしょうか。
DXでもよく見る光景です。ツールを入れる「0→1」は、実はそれほど難しくありません。本当に難しいのは、現場に根づかせて成果につなげる「1→100」のほうです。
仕事で、本物の天才にはまだ出会っていない
正直に書くと、私は仕事で「この人は本物の天才だ」と思える人に、まだ出会っていません。
優秀な人はたくさんいます。頭の回転が速い人、資料づくりが抜群にうまい人、人を動かすのが上手な人。でも、メッシのように「この人がいれば、ルールそのものが変わる」と感じた人はいません。
ただ、最近こう考えるようになりました。
天才がいないのではなく、まだ見つかっていないだけかもしれない。
メッシも、子どものころに成長ホルモンの治療が必要だと分かったとき、それを支えるクラブがあったからこそ、あの才能が世に出ました。才能は、見つける人と支える環境がそろって、はじめて形になります。
もしかすると、自分のチームのなかにも“メッシの芽”があるのに、私が気づけていないだけなのかもしれません。
いつか出会う天才のために、準備する3つのこと
だから、いま私が考えているのは「天才になること」ではありません。
いつか天才に出会ったときに、その人を活かせる自分でいることです。
そのために、準備していることが3つあります。
1. わかり合う言葉を持つ
天才は、普通の人が気にする論点をすっ飛ばして、いきなりゴールに向かいます。周りから見ると「何を言っているのか分からない」「段取りを無視している」と映ることも少なくありません。
そのとき必要なのは、天才の考えを周りに伝わる言葉に置き換える人です。現場の言葉、経営の言葉、技術の言葉。いくつもの言葉を持っていれば、天才とチームの通訳になれます。
自分に見えているものと、相手に見えているものは違う。その前提に立って、共通認識をつくる。これは、天才がいてもいなくても、リーダーにとって一番大事な仕事だと思っています。
2. 本質を見抜く目を持つ
天才がすっ飛ばした論点のなかには、本当にどうでもいいものと、拾っておかないと後で大事故になるものが混ざっています。
その2つを見分けるには、「本当に解決したいことは何か」を見極める目が必要です。目の前の手続きやルールにとらわれず、ゴールに向かううえで中心にある課題をつかむ。そうすれば、天才の突破を止めずに、必要な論点だけを拾うことができます。
3. 最後までやり切る
どんなに優れたアイデアも、実行されなければ価値を生みません。
天才が0→1を生んだ後、それを1→10、1→100に育てるのは、地道に走り続ける人です。長友佑都選手は、大学のサッカー部で一時はスタンドで応援する側にいたところから、努力を重ねて世界の舞台に立ちました。才能の差を、やり切る力で埋めていく。私が目指したいのは、こういう姿です。
支える人が、チームを変える
メッシにはなれなくても、メッシを活かすチームはつくれる。
そして、チームのなかに眠っている“メッシの芽”に気づき、育てることもできる。
0→1の天才と、1→10、1→100を支える人。どちらが欠けても、チームは勝ち続けられません。
まだメッシには出会っていません。
だからこそ、今のうちに準備しておこうと思います。わかり合う言葉を持ち、本質を見抜く目を養い、最後までやり切る力を鍛えておく。
いつか出会う天才と、変革を生み出すチームをつくるために。
準備のために読んでいる3冊
「準備する3つのこと」それぞれに、ヒントをくれた本を紹介します。
1. わかり合う言葉を持つ
北野唯我『天才を殺す凡人 職場の人間関係に悩む、すべての人へ』
天才・秀才・凡人がなぜすれ違うのか、その間をつなぐ人に何ができるのかを描いた一冊。天才とチームの「通訳」になるヒントが詰まっています。
2. 本質を見抜く目を持つ
安宅和人『イシューからはじめよ[改訂版]――知的生産の「シンプルな本質」』
「本当に解決すべき問いは何か」を見極める考え方の定番。拾うべき論点と、捨ててよい論点を見分ける力を鍛えられます。
3. 最後までやり切る
アンジェラ・ダックワース『やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』
成果を分けるのは才能よりも「情熱と粘り強さ」だと示した本。才能の差をやり切る力で埋めていく、という考え方を後押ししてくれます。

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